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桑椹祭順奉母」雑劇第二節には家庭の雑神たち、すなわち、増福神・門神・戸尉・土地・井神・竈神・厠神などが登場する。これは、韓国農楽隊の地神踏みで農楽隊が各家庭を訪問し竈王・門神・井神・成造神・天龍神・地神・厠神・祖神などに祈願し、家のすみずみの雑鬼を追い払う様子と大変似ている。それゆえ農楽隊の地神踏みは儺礼の遺風だということを確認することができる。
?北青獅子戯………高麗末、李穡の<駆儺行>は儺礼で獅子舞が演じられた事実を伝えてくれる。この詩の“舞五方鬼踊白澤”という内容を通して駆儺儀式が終わった後に行われる儺戯のはじめのものとして五万鬼舞と白澤舞があったことを知ることができる。白澤は神獣、または獅子の別称だが、ここでは獅子の別称である。中国の儺礼でよく獅子舞が行われたように、韓国でも高麗末の儺礼ですでに獅子舞が演じられていたのである。
咸鏡南道北青地方で伝承された北青真子戯は儺礼の埋鬼行事と同一の姿をみせる。北青地方では正月十五日の夜に数十戸単位の部落ごとに独自に獅子戯を用意し一晩中遊んだ。そして、十六日明け方、獅子戯が終わると部落の家々を訪問しながら儺礼の埋鬼、すなわち、地神踏みと似た儀式を行う。獅子は頭の部分に鈴をたくさんつけているのだが、これは鈴の音を通して雑鬼を追い払おうとするものである。まず、獅子は家の中に入り、鈴の音を鳴らしながら庭をくるくるまわり気勢をあげてみせ、次に奥の間の門を開け、部屋の中に入る。そして“タッタ”という音をたてながら口を開けたり閉じたりしつつ鬼神をとって食べる真似をし、また台所に入っても同じしぐさをした後、桶を一つくわえて出てきては、庭に投げこわす。これは鬼神を追う儀式である。そうした後、おもしろおかしくひとしきり踊る。この時、子供を獅子の上にのせると無病息災に暮らすといい上にのせたりもする。
北青獅子戯は正月十五日に行われる大部分の民俗戯と同じく、辟邪道慶を目的に行われた。百獣の王である獅子が登場するだけでも辟邪的な機能をするが、特に獅子が鈴の音を鳴らしながら、家々を訪問し、家のすみずみにひそむ雑鬼を追う姿は儺礼での埋鬼という行事と完全に一致する。そして、一九四三年に宋錫夏先生が蒐集した北青の獅子仮面はおそろしい形相だが、写真のように目玉の縁を麦桿で編んでこしらえたので黄金色である。黄金色は労相氏の黄金の四目でわかるように辟邪色である。
?仮面戯……仮面戯に登場する人物の性格と仮面戯の劇的形式は儺礼の登場人物の性格および躯儺の形式から直接的にたいへん大きな影響を受けたものということができる。朝

 

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八墨僧舞

 

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一九三六年の八墨僧の群舞

 

 

 

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